エピソード集:映画編

2018/6/18
  • 「ひまわり」
 第2次世界大戦時に引き裂かれた悲運の愛を描いたこの映画をご覧になった方は多いのではないでしょうか? 実はこの広大なひまわり畑は,ウクライナで撮影されたものなのです。ソフィア・ローレン扮するジョバンナが,行方不明となった夫マルチェロ・マストロヤンニ扮するアントニオを一面に咲き誇るひまわり畑の中で必死に探している姿は,みなさんの記憶にも鮮明に残っていることでしょう。
 撮影現場はキエフから南へ500kmほど行ったヘルソン州と言われています。今でも7月下旬頃にキエフから南下して郊外へ行くと,一面に咲きわたるひまわりを見ることができます。但し,面白いことに,日本で販売されている「ひまわり」のビデオの説明書にわざわざこう書いてあるのです。「(映画に出てくるひまわり畑は)ウクライナと信じておられる方には申し訳ないが,ひまわり畑はモスクワのシェレメチェボ国際空港の近くだった。」
 この映画が撮影された1960~70年代及びビデオが販売された時代には,ウクライナは旧ソ連の一共和国であり,外国人はクレムリンから80km以上離れてはいけないと言う規則があったため,多くの観光客がウクライナに押しかけるのを当局が恐れたせいかもしれません。この映画がウクライナで撮影された証拠に,ひまわり畑の中でソフィア・ローレンが老婆に夫の消息を尋ねるシーンがあるのですが,その老婆はウクライナ語で答えています。

 
  • 「戦艦ポチョムキン」
 ウクライナ南部の港町オデッサが舞台となったこの映画は,ラトビア・リガ生まれのエイゼンシュテイン監督が,モンタージュ技法という言葉を世界に普及させたものとして映画ファンには有名になっています。実はエイゼンシュテイン監督は,1910年代にモスクワの参謀本部アカデミー東洋部で日本語を学び,それがモンタージュ技法に影響を与えたと言うから不思議ではありませんか。
 例えば,「水と目の描写は“泣く(泪)”を意味する」といったことこそが「モンタージュ」だと彼の著作で述べられています。また,歌舞伎から「演技の切断」及び「演技の分解」のヒントを得たそうです。
 オデッサに行くと「ポチョムキンの階段」と呼ばれるこの映画に使われた階段があります。どこにでもありそうな階段なのですが,不思議なことに階段の下から見上げると,階段と階段の踊り場(数カ所あります)が全く見えず,あたかも長い階段が連なっているかのように見え,また,上から見下ろすと階段部分が見えず踊り場だけが下まで連なっているかのように見えます。残念ながら,現在では踊り場部分が広告になっており,上から下まで広告という味気ない風景になってしまいました。
 映画の中で,この階段を転げ落ちる乳母車のシーンがあるのですが,これに似たシーンは,映画「アンタッチャブル」を初め多くの映画の中に見られ,「戦艦ポチョムキン」が映画界にもたらした影響の大きさを測り知ることができます。

 
  • 「クレヴァニ 愛のトンネル」
 ウクライナの「愛のトンネル」は,日本においても有名になっています。2015年には,日本において「クレヴァニ 愛のトンネル」という今関あきよし監督,未来穂香主演の映画が公開されましたが,この映画は実際にウクライナにおいてロケを行っています。
 「愛のトンネル」とは,ウクライナの西部リーウネ州にあるトンネルで,木々に囲まれた鉄道路線上のトンネルが美しい景観を作っており,カップルがこのトンネルをくぐると願いが叶うという言い伝えがあります。ウクライナの首都キエフから車で約5時間かかる距離にあり,なかなか訪れることが難しいのですが,写真にあるように緑のアーチが続く不思議な世界を醸し出しています。
 映画の題名にあるクレヴァニとはトンネルのある場所の名前で,高校の教師と生徒との不思議な愛の物語の舞台となっています。今関監督によると,撮影にあたって一番悩まされたのがトンネル内の蚊の問題だったそうですが,主演の未来穂香さんは全く苦情も言わずに演技を行っていたそうです。映画にはキエフの中央駅やウクライナの美しい田舎の風景も出てきますので,この映画を見てからウクライナに来られると興味が倍増すると思います。