倉井大使挨拶(2021年2月)
令和3年2月23日
新型コロナウイルス感染症は多くの国において少しずつ減少しつつあるようですが、なお安心はできない状態が続いています。昨年から当大使館の活動も様々な制約を受け、本年は毎年実施している天皇誕生日祝賀レセプションも中止を余儀なくされました。このような状況の中ではありますが、本年の天皇誕生日の機会を捉えて、皆さまにひとことご挨拶させていただきます。
思えば、昨年2月19日に行いました天皇誕生日レセプションは、これまでのところ当館として催した最後の大がかりな行事となりました。その後当地における防疫措置との関係もあり大使館業務を縮小せざるを得ない時期もありましたが、様々な工夫をこらしつつ、個々の協議や調整、経済協力、邦人保護業務等は殆どそれ以前と変わらない形で行ってきております。中でもいわゆるG7大使「ウクライナ・サポートグループ」の活動は、コロナ禍の中でもほぼ変わらず続けられてきました。
ウクライナは大変な潜在力をもった国であることは間違いなく、政治においても経済においてもやれることが山ほどあり、これらが実現することは地域、更には国際社会にとっても大きな意味をもつものです。ただそのためにウクライナ側に改革して頂かないといけないことも少なからずあり、G7大使の活動はそのような構造改革を支援する枠組みです。
日ウクライナ間の貿易関係を見ますと、2014年のマイダン革命の直後には大きく落ち込みましたが、この7年間のうちに着実に回復してきており、少しずつではありますが伸びてきております。このような傾向は当地の政治・経済両面における安定化が背景にあると考えられますところ、当国が引き続き安定的に発展し、経済関係が更に拡大するとともに、より多くの日本人の方が来訪されることを願っております。
経済協力について申し上げますと、わが国はウクライナに対し独立以来合計で約31億ドルの支援を行って来ております。その多くはボリスピリ国際空港に代表されるようなインフラ・プロジェクトですが、同時に人道支援も着実に行ってきており、先般1月28日にはウクライナにおける新型コロナウイルス感染拡大を背景とする支援として、国境警備庁に対する医療機材の供与につき手続きを了しました。今回供与されるMRIは、新型コロナウイルス感染の可能性のある患者だけではなく、感染症の水際防止に昼夜奮闘する国境警備庁職員や一般のウクライナ市民の診断・治療に役立てられ、ウクライナ全体の保健・医療制度の強化につながるものです。
わが国はまた、2014年以降、長引く紛争に苦しむウクライナ東部の人々に対する人道支援を一貫して行ってまいりましたが、同じく1月の末に、この東部支援の一環として国際機関を通じて新たに450万ドルの拠出を行うことを決定いたしました。そのほか、ウクライナの医療機関や社会・教育機関等に対する草の根・人間の安全保障無償資金協力も着実に実施してきております。
この関連で、昨年、当地のJICA職員の増員が可能となったことをお伝えいたします。当地JICA事務所は2017年11月に開設され、その後1名体制で運営されてきましたが、昨年12月からもう1名増員され、2名体制へと拡大しました。これによりウクライナに対する技術支援、更には日本とウクライナの経済関係の一層の深化を期待しております。
政治面の協力につきましても、二国間関係の文脈のみならず,国連などを通じた国際社会における協力も進んでおります。わが国はウクライナの主権・独立・領土の一体性を強く支持しており、関連の国連総会決議等に対してはすべて支持を表明しております。またウクライナは、ソ連邦崩壊の後に,核兵器を持たずそれまであった核兵器をすべて移転ないし廃棄する旨の決断をした国の一つであり、わが国とは核廃絶に向けたイニシアチブについても、協働してきております。
このほか、ドンバスの現地情勢の監視等を目的に開始されたOSCE/SMM(Special Monitoring Mission)については、日本人職員のポストが一昨年以来空席となっていましたが、新たな日本人職員が2月末から勤務を開始する予定です。
今年はウクライナにとって、独立30周年を迎える特別な年ですが、日本においても、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される特別の意義を有する年となります。同時に、京都・キエフの姉妹都市提携から50周年、また日本政府として長年その被害の軽減と復興に協力してきたチェルノブイリ原発事故から35年を迎えます。更に、明年には、日本とウクライナとの外交関係樹立から30周年を迎えることになります。コロナ禍の克服に向けて両国とも引き続き予断の許さない状況ですが、こうした重要な局面を迎える本年から明年にかけて、二国間関係の一層の深化に向けて、最大の努力をして参る所存です。
海外にお住まいの邦人・日系企業の皆様の安全は、当館が常に留意すべき最重要課題であり、引き続き政治・治安情勢・新型コロナウイルス感染症等について情報提供を行ってまいります。皆様方の力強いご支援、ご協力を引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。
思えば、昨年2月19日に行いました天皇誕生日レセプションは、これまでのところ当館として催した最後の大がかりな行事となりました。その後当地における防疫措置との関係もあり大使館業務を縮小せざるを得ない時期もありましたが、様々な工夫をこらしつつ、個々の協議や調整、経済協力、邦人保護業務等は殆どそれ以前と変わらない形で行ってきております。中でもいわゆるG7大使「ウクライナ・サポートグループ」の活動は、コロナ禍の中でもほぼ変わらず続けられてきました。
ウクライナは大変な潜在力をもった国であることは間違いなく、政治においても経済においてもやれることが山ほどあり、これらが実現することは地域、更には国際社会にとっても大きな意味をもつものです。ただそのためにウクライナ側に改革して頂かないといけないことも少なからずあり、G7大使の活動はそのような構造改革を支援する枠組みです。
日ウクライナ間の貿易関係を見ますと、2014年のマイダン革命の直後には大きく落ち込みましたが、この7年間のうちに着実に回復してきており、少しずつではありますが伸びてきております。このような傾向は当地の政治・経済両面における安定化が背景にあると考えられますところ、当国が引き続き安定的に発展し、経済関係が更に拡大するとともに、より多くの日本人の方が来訪されることを願っております。
経済協力について申し上げますと、わが国はウクライナに対し独立以来合計で約31億ドルの支援を行って来ております。その多くはボリスピリ国際空港に代表されるようなインフラ・プロジェクトですが、同時に人道支援も着実に行ってきており、先般1月28日にはウクライナにおける新型コロナウイルス感染拡大を背景とする支援として、国境警備庁に対する医療機材の供与につき手続きを了しました。今回供与されるMRIは、新型コロナウイルス感染の可能性のある患者だけではなく、感染症の水際防止に昼夜奮闘する国境警備庁職員や一般のウクライナ市民の診断・治療に役立てられ、ウクライナ全体の保健・医療制度の強化につながるものです。
わが国はまた、2014年以降、長引く紛争に苦しむウクライナ東部の人々に対する人道支援を一貫して行ってまいりましたが、同じく1月の末に、この東部支援の一環として国際機関を通じて新たに450万ドルの拠出を行うことを決定いたしました。そのほか、ウクライナの医療機関や社会・教育機関等に対する草の根・人間の安全保障無償資金協力も着実に実施してきております。
この関連で、昨年、当地のJICA職員の増員が可能となったことをお伝えいたします。当地JICA事務所は2017年11月に開設され、その後1名体制で運営されてきましたが、昨年12月からもう1名増員され、2名体制へと拡大しました。これによりウクライナに対する技術支援、更には日本とウクライナの経済関係の一層の深化を期待しております。
政治面の協力につきましても、二国間関係の文脈のみならず,国連などを通じた国際社会における協力も進んでおります。わが国はウクライナの主権・独立・領土の一体性を強く支持しており、関連の国連総会決議等に対してはすべて支持を表明しております。またウクライナは、ソ連邦崩壊の後に,核兵器を持たずそれまであった核兵器をすべて移転ないし廃棄する旨の決断をした国の一つであり、わが国とは核廃絶に向けたイニシアチブについても、協働してきております。
このほか、ドンバスの現地情勢の監視等を目的に開始されたOSCE/SMM(Special Monitoring Mission)については、日本人職員のポストが一昨年以来空席となっていましたが、新たな日本人職員が2月末から勤務を開始する予定です。
今年はウクライナにとって、独立30周年を迎える特別な年ですが、日本においても、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される特別の意義を有する年となります。同時に、京都・キエフの姉妹都市提携から50周年、また日本政府として長年その被害の軽減と復興に協力してきたチェルノブイリ原発事故から35年を迎えます。更に、明年には、日本とウクライナとの外交関係樹立から30周年を迎えることになります。コロナ禍の克服に向けて両国とも引き続き予断の許さない状況ですが、こうした重要な局面を迎える本年から明年にかけて、二国間関係の一層の深化に向けて、最大の努力をして参る所存です。
海外にお住まいの邦人・日系企業の皆様の安全は、当館が常に留意すべき最重要課題であり、引き続き政治・治安情勢・新型コロナウイルス感染症等について情報提供を行ってまいります。皆様方の力強いご支援、ご協力を引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。
令和3年2月
倉井 高志
ウクライナ駐箚特命全権大使
倉井 高志
ウクライナ駐箚特命全権大使