倉井大使挨拶

令和3年11月1日
私儀、
この度、在ウクライナ日本国大使としての任務を終え、日本に帰国することになりました。この2年と10ヶ月ほどの間、当地在留邦人の方々には大変にお世話になり、改めて深く御礼申し上げます。今回私にとっては当地勤務の終了のみならず、40年にわたる公務員生活にも終止符を打つことにもなりますが、最後の勤務をこのウクライナで終えることができたことは、自分にとって大きな喜びでした。

この間、ご案内の通りコロナ禍のため約1年半にわたって人との接触が大きく制限され、毎年必ず実施する天皇誕生日レセプションを始め、数多くの行事の実施を断念せざるを得ませんでした。

ウクライナ政府関係者の方々との接触も、一時期はかなり制約せざるを得ないことがあり、一つ一つの実務にこれまで以上に時間と手間をかけることになって、思うように進まないこともありました。大使館の業務について、当地邦人の方々にもご不便をおかけすることが多々あったろうと思います。

ただ当地においても、もちろん油断することはできませんが、コロナは全体としてはかなり落ち着きを見せてきており、そう遠くないうちに通常の生活に戻れることを期待しています。

日本とウクライナの二国間関係においては、2年前の10月、ゼレンスキー大統領が即位の礼に参列のため日本を訪れ、首脳会談が行われた他、日本の経済界要人との会談等が行われました。続いて12月には第8回日本ウクライナ経済合同会議が東京で開かれています。

その後、2020年はコロナ禍のため人の往来は大きく制約を受けましたが、本年3月には日ウクライナ関係の歴史において初めての国防大臣の訪日が実現いたしました。また同じ時期に首脳電話会談や、日本の国家安全保障局長とウクライナ安全保障・国防会議書記との電話会談、サイバー安全保障のための協力覚書への署名等が行われています。

そしてなんと言っても、7月から9月初めにかけて、東京オリンピック・パラリンピック2020に参加のため、多くのウクライナの人々が日本を訪れました。競技終了後、当地に戻ってきた選手たちに感想を聞きますと、どの人も例外なく、日本については大変良い印象を語ってくれます。彼らの話し方を見て、これがお世辞ではないことはすぐに分かります。

経済協力の分野では、ボルトニッチ下水処理施設改修案件が大詰めにかかっている他、ミコライウの橋梁案件も実施に向けて進展しております。その他、草の根無償資金協力や東部支援等、地元の人たちの生活向上に役立つ経済協力は一貫して継続してきております。

私が当地における勤務で感じたもっとも大きなことは、ウクライナは大変な潜在力を持っているということでした。この潜在力はまだ十分に発揮されるに至っていないかも知れませんが、将来を見据えて、政治面においても経済面においても二国間関係を一層強化していくことは両国にとって大変有益と信じ、この2年と10ヶ月、頑張ってまいりました。

これまでの業務が今後の更なる二国間関係の発展につながり、たとえ8000km以上離れたところに位置していても、互いに相手国民のことを近しい存在、親しみやすい存在と感じて、国民レベルの交流が一層盛んになることを心から祈っております。

最後に、改めましてこれまでの大使館の業務に対するご理解、ご協力に心から感謝いたします。皆さんの益々のご健勝を祈っております。
在勤中、大変にお世話になりました。

2021年10月吉日
ウクライナ駐箚日本国大使
倉井 高志